労働力の確保

内閣府のまとめたミニ白書における労働力調査の分析によれば、労働時間を増やせると考える人は、仕事に就く人の4%にあたる280万人程度いるとしています。内訳はパートなどの短時間労働者の女性が半分の133万人と最も多く、正社員など一般労働者の男性が57万人です。働く時間を増やせていない理由は、勤務制度など会社の都合が52.8%と最も多く、適した仕事がないが24.5%で、社会制度の制約が11.8%でした。
要因の一つに、一定の所得を超えると税や社会保険料負担が発生する年収の壁が挙げられます。子どもを持つ女性の就業率は高まっていますが、子育ての負担を理由に正社員からパートなどの非正規雇用に切り替える女性も多く見られます。適した仕事がないとの回答を生む要因になっているのが仕事のミスマッチです。子育てが一段落して正社員に復帰したい女性らには、リスキリングなどでもっと働きたいという希望と、それにあった仕事をマッチングする必要があります。
正社員の場合、副業の後押しがカギを握っています。正規雇用者で副業をする男女は、全ての年代で1週間の平均労働時間が8~13時間ほど、副業をしない人より長くなっています。正規雇用で副業の意思があるのにしていない理由は、本業で認められていないが53.8%で最も多くなっています。本業が制約となっている人は、金融・保険業で67.2%、教育・学習支援で64.5%です。副業の促進などで労働力を掘り起こせば所得の増加にもつながります。
日本は、女性や高齢者の労働参加によって働き手の減少を抑えてきましたが、さらに人口が減っていけばやがて細ってしまいます。人手不足を解消するには、様々な制約を取り除き、働き手を増やす考え方を頭数から時間に軸足を移すのが大切となります。

(2024年2月21日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。