医療事故調査制度の報告数

2015年10月に始まった医療事故調査制度では、医療に起因する予期せぬ死亡事故が起きた際、医療機関は、第三者機関の医療事故調査・支援センターに報告し、調査をすることになっています。しかし、報告すべき事故かどうかは、院長ら医療機関の管理者が判断することになっています。この制度の狙いは、医師ら個人の責任を追及することではなく、死因をつきとめ事故の再発を防ぐことにあります。しかし、報告数は伸び悩んでいます。
医療事故調査制度の報告数が、都道府県で5倍近い差が出ています。人口100万人あたりの報告数は、全国平均で年2.8件です。最多は5.3件の宮崎で、最少は1.1件の福井です。そもそも医療事故が少ないために報告されていない可能性もありますが、5倍近くの開きがあります。一般的にベッド数が多い病院ほど高度な手術や検査をするので事故件数は多いとされています。しかし、600床以上の229施設のうち、2022年末までの7年超に事故報告が1件もなかったのは、55施設(24%)を占めています。
客観的な調査をし、遺族と病院が事実経緯を共有すると、正しい評価が可能になり、遺族の納得も得られやすくなります。再発防止という制度の趣旨からすれば、医療過誤による死は率先して調査すべきです。事故として報告することが施設にとってマイナスだという雰囲気をなくしていかなければなりません。

 

(2023年5月8日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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