医系技官の役割

医系技官とは、国家公務員のうち医師や歯科医の免許を持つ行政官のことを言います。厚生労働省が、採用の窓口で国家公務員の採用試験が免除されるなど、通常の官僚とは別の採用体系となっているのが特徴です。厚生労働省の本省や検疫所など関連機関に加え、内閣官房や文部科学省、国立病院などで勤務する技官もいます。世界保健機関(WHO)など国際機関に派遣されるケースもあります。医系技官のほかにも、薬系や看護系、獣医系などの専門的な技官がいます。
保健医療分野は専門的な知識が求められるため、事務官と技官が連携しながら政策づくりにあたります。医系技官の歴史は古く、明治期に日本の公衆衛生の確立に貢献した後藤新平や、近代日本医学の父とされる北里柴三郎、最近では政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長らも医系技官です。2017年には国の医療・保健政策の司令塔として、次官級の医系技官ポストである医務技監が新設されました。専門的な知識を生かし、感染症の予防などでは海外当局との交渉など、医療の国際連携も担うことが求められています。
医系技官は、事務を担当する官僚とは異なる職種で、国家公務員試験を受けずに入省します。およそ300人の人事は、トップの医務技監が握り、閣僚や事務次官の統制が及びにくい状況にあります。政府内で、ギルドのような独自組織と呼ばれています。コロナ禍で、医系技官が保健所の権益や開業医の負担に配慮したことなどが指摘されるようになってきています。

(2021年11月22日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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