医薬品原材料の海外依存

医薬品原材料の生産を巡り、国内製薬業界で海外依存を見直す動きが出てきています。抗菌剤など欠品すると医療に大きな支障が出る品目で、各社が国内回帰に乗り出しています。
医薬品原材料とは医薬品の有効成分が含まれる原薬やそのもとになる化学物質です。国内回帰の動きがあるのは、主に後発薬の原材料です。後発薬は、公定価格が安く抑えられており、製造原価を下げる目的で原材料生産の海外移転が進んできました。厚生労働省によれば、後発薬原材料を調達する製造所の6割が海外で、中国が約14%、インドが約12%と高くなっています。一方で、各国の保護主義政策に供給が左右されかねない状況にあります。
米国でも、政府主導で生産の国内回帰の動きが進んでいます。米食品医薬品局は、新型コロナ禍により中国から原薬調達が難しくなり、一部の医薬品が供給不足に陥っています。しかし、原薬生産の国内回帰には課題が残ります。国内回帰は、薬のコスト上昇につながりかねません。薬価が定まっている中、メーカーがコスト上昇分を転嫁し、流通業者への納入価格を上げるのは容易ではありません。

(2021年7月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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