周産期医療施設の集約化

 全国どこでも安心して出産できる環境を整えようと、分娩を扱う周産期施設を集約する動きが出てきています。背景にあるのは産科医不足です。医師を集めて当直などの負担を軽減し、働きやすい職場をつくることで、体制の安定と維持を目指しています。しかし、それまで分娩施設があった市町村にとっては、住民の利便性が低くなりかねないという思いが強くあります。集約化を成功させた素晴らしいモデルが大阪府にあります。両市の反対はありましたが、大阪大学の木村正教授の主導で、2008年に成立しました。
 泉佐野市のりんくう総合医療センターと、泉佐野市に隣接する貝塚市の市立貝塚病院の産婦人科を総合しました。診察や検診は両病院で行いますが、分娩はりんくう、婦人科の手術は貝塚病院にそれぞれ集約し、すみ分けをしました。2つの病院の体制は半世紀前と同じ少人数で綱渡り状態でした。貝塚病院の産婦人科医も当直はりんくうに赴くことで2人当直体制が実現し、全ての患者受け入れが可能になりました。産科医1人当たりの負担を軽減させなければ、今の医療水準を維持できません。そのため、自治体は住民や地域医療を担う病院が判断しやすいよう、施設や機能の集約の必要性を具体的に示すべきです。

(2016年10月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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