基礎研究の重要性

 今年のノーベル医学生理学賞は大隅良典東京工業大学栄誉教授に決まりました。大隅先生を含め、2001年以降の自然科学系での日本人ノーベル賞受賞者は16人に達しました。約60人の米国に次いで2番目ですが、そのほとんどが1030年前の研究成果で、いわば過去の遺産です。わが国の財政難もあり、近年、すぐに成果を見込めそうな研究に競争的資金を重点的に配分し、基礎研究にしわ寄せがいく傾向があります。国立大学法人への研究費を含む運営費交付金は、2014年度は11,123億円で、10年前より1割減っています。
 現在、運営費交付金における研究費は、競争的資金がほとんどです。しかし、競争的資金は年限があり、息の長い研究には向いていません。この研究をしたら役に立つというお金の出し方ではなく、長い視点で科学を支えていく社会の余裕が大切です。研究開発費に占める基礎研究の割合は、フランスでは8割をゆうに超えていますが、日本の大学では半分強にとどまっています。ドイツなどの欧州では研究費が広く薄く行き渡るように配分されていますが、日本では競争的資金が有力な研究者に集中しがちです。日本では経済悪化もあり、すそ野が小さくなっているのも気がかりです。それに学生の研究者離れは深刻です。

(2016年10月5日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。