変革をせまられる医療・介護

政府が5月にまとめた2040年を見据えた社会保障の将来見通しによれば、1971~74年に産まれた第2次ベビーブーマーが65歳を過ぎる2040年にかけ、社会保障の現場が厳しい人手不足に直面するとされています。推計によれば、医療や介護、その他の福祉の提供に要する就業者数は2040年度に1,065万人に達します。2018年度の823万人より3割近くも多くの担い手がこの分野に求められる計算になります。この間に社会全体の就業者数は、6,580万人から5,654万人に14%減ってしまいます。そのため、他業種との人材獲得競争ははるかに激しくなると予想されます。外国人や女性、高齢者に労働力としてもっと活躍してもらうことが必要になります。
2040年度の社会保障給付費は、2018年度より6割多い190兆円に達します。税金や保険料を負担する現役世代が先細る中、給付が一方的に膨らむアンバラスをどうならしていくかは日本経済の大きな課題です。しかし、お金がどれだけ潤沢にあったとしても、サービスの担い手が足りなくなれば、医療や介護はきちんと提供されなくなってしまいます。日本の経済・社会の今後は、財政面のみならず、人手の問題が社会保障の仕組みを脅かすという危険なシナリオも考えていかなければなりません。医療や介護は岩盤と評され、独特の規制に覆われ、聖域のように扱われてきました。医療や介護も聖域ではなく、いつでもどこでも医療や介護が受けられるといったオンライン診療を含め、AIやロボットなどの活用が必要となってきます。患者の意識の変革が大切です。今後は医療者側も生産性の向上を考えていかなければなりません。

(2018年7月13日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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