多様な保育ニーズへの対応

これまでの政府の少子化対策は、仕事を辞めずに育児休業を取る人らの支援が中心でしたが、保育所の拡充などで待機児童は、直近のピークだった2017年の2万6,081人から2022年には2,944人に減少しています。しかし、出産を機に退社したものの、育児を経て転職する人などへの支援の拡充は遅れ気味です。経済的な理由から子どもを1人にとどめる家庭もあります。半数超を占める退社・専業主婦の育児希望者への支援は、労働力の増加や出生率の向上のカギを握っています。
一度退社して再就職する際に学び直しで新たなスキルを身に付けて成長産業に移るケースなどもあります。働いていなくても保育所を使いやすくすれば、学校などにも通いやすくなります。そのためには、家庭での保育が一時的に困難になる場合、一時預かりなどの制度の普及が大切となります。
小学校入学を機に子どもの預け先に困り、仕事の両立が難しくなる小1の壁の課題も指摘されています。自治体やNPO、民間企業が運営する学童保育(放課後児童クラブ)は開いている時間が短く、親の帰宅が間に合わない場合があります。学童に入所を希望しないながらも入れない待機学童は、2022年5月時点で1万5,180人に上っています。政府や自治体は、学童の職員になるために必要な指導員資格の取得を広く呼びかけ、担い手の増加を目指しています。
病気の子どもを病院や保育所などで、看護師などが保育する病児保育は、対応施設は増えてきていますが、拡充へ国の支援がさらに必要になります。今後は分娩後の女性の心身の産後ケアに対する支援も大切になります。
児童手当の拡充といったこれまでの取り組みの延長だけではなく、学び直しによる転職などで労働市場を流動化しつつ、出生率を高めていくためには新たなニーズに対応した支援が急務になってきています。

(2023年2月21日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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