妊婦加算の中止に憶う

妊婦が医療機関を受診した際に負担する妊婦加算は、来年1月1日に事実上、廃止されることが決まりました。妊婦加算は、妊婦や胎児への影響を考慮した検査薬の処方につなげる目的で、2018年度の診療報酬改定で新設されました。妊婦の自己負担は初診で約230円、再診で約110円増えました。妊婦の自己負担増に対する強い反発を受け、政治主導で凍結が決まりました。
妊婦加算は、母体や胎児への影響を考慮した投薬や検査など、通常より丁寧な診察を評価する趣旨で導入されました。しかし、自己負担が増えるため、少子化対策に逆行するとの批判が高まり、与党が見直しを求めてきました。加算の背景には、産科以外の診療科で妊婦が敬遠されがちな実態があります。風邪など一般的な症状も、トラブルを恐れて診察や薬の処方を拒み、産科受診を指示する医療機関は少なくありません。
一方で、産科医療は医師不足が特に深刻で、崩壊寸前の地域もあります。加算を通じ、他の診療科も妊婦の特性を知り、積極的に関わってもらうという趣旨は間違っていないと思われます。妊娠前の診療と変わらないのに、自己負担が増えれば、妊婦が反発するのも無理はありません。妊娠・出産に関する医療は、原則として保険適用外です。自己負担額が増えた部分については、公費で賄うことにすれば何の問題もないように思えます。負担軽減や少子化対策を言うのであれば、一時金増額や保険適用のあり方を含め、妊婦の診療を総合的に検討すべきです。妊婦に配慮した医療の拡充は重要です。

(吉村 やすのり)

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