子どもの高層階転落事故の防止

子どもがマンションの高層階から転落して死亡する事故が後を絶ちません。東京消防庁のまとめによれば、気候が良く窓を開ける機会の多い春と秋に事故の7割が集中しています。未就学児の多くが、30秒以内でベランダの柵を乗り越えられるとの実験結果もあります。補助錠の活用に加えて、タワーマンションなど高層階に慣れた子どもに対する啓発も欠かせません。
2017~2021年に転落事故で救急搬送された5歳以下の子ども62人のうち、5月が17人で最も多く、次いで10月が9人でした。季節別にみると、春(3~5月)は24人、秋(9~11月)は20人で、合わせると全体の7割を占めています。春や秋は過ごしやすい季節で、冷暖房を使わずに窓を開けて換気をする場合が多いことに起因すると考えられています。
国土交通省によれば、建築基準法で2階以上の手すり壁や柵の高さは1.1m以上と規定されています。3歳児の平均身長は約90㎝で、腕を伸ばして背伸びをすると1.1m程度の高さになります。高さ1.2mの柵を30秒以内に乗り越えられたのは、5歳児クラスで90%、4歳児クラスで72%、3歳児クラスでも65%でした。
転落防止対策として、①べラダンの手すり付近に足場になるものを置かない、②エアコンの室外機などを手すりから60㎝以上離す、③手すりなどに劣化がないか定期的に点検する、④子どもだけを家に残して外出しないなどを呼びかけています。親が在宅していても事故は起きています。保護者が外出中に起きた事故は、全体の約1割にとどまっています。保護者が子どもを24時間見守ることは難しく、補助錠を窓枠の上部に付ける、足がかけにくい柵のデザインにしたり、柵を手前に傾斜させたりするなどの工夫も必要です。

 

(2022年11月21日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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