子ども庁への期待

新しく創設される子ども庁が、情報を所管横断的に集約・分析し、強い総合調整機能を持ちながら、子ども達の様々な課題解決に当たることが期待されています。そのためには、子ども庁の創設を中央省庁の再編にとどまらず、自治体での組織の再編につなげる必要があります。幼稚園・保育所・公立小中学校は市区町村、高校は都道府県が設置主体となっています。このため中央省庁のみが縦割りを廃しても、それが自治体にまで浸透しなければ意味がありません。このため中央省庁と同様に、自治体内の縦割りも廃することができるかがカギとなります。
次に、幼稚園・保育所・学校などの供給サイドが、政策にどのように反応するかということをしっかり把握すべきです。現在の幼児教育・保育に関する制度では、想定の運営費があらかじめ設定され、保育料などの利用料が統制されています。そのため、幼児教育・保育の質を上げようと規制を厳格にした際に、保育士などの労働者の賃金が下がるという意図せぬ結果になることがあります。子ども庁で包括的な制度設計・政策形成に取り組むならば、親や子どもという教育の需要サイドだけではなく、供給サイドのインセンティブ構造も把握したうえで、制度設計に生かす必要があります。
最後に、何よりも教育の質を高めることが大切です。これまでの教育の公的支出は、幼児教育や大学教育の無償化など、教育の需要サイドを刺激する再分配政策が中心となってきました。今後は、教育の質を高めるような供給サイドへの投資も必要になります。
これまで幼児教育でも無償化や待機児童の問題ばかりが議論され、幼児教育の質はほとんど議論されてきませんでした。子どもに対する質の高い教育の投資は、子どもが大人になった後の税収の増加や社会保障費の削減により、初期の支出を回収できていることも示されています。子どもの学齢が高いほど教育の費用対効果は高く、幼少期の投資とその後の投資は補完関係ではなく、代替関係にあるとされています。

(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。