緊急避妊薬の適切な利用に向けて

厚生労働省の専門家会議は、避妊の失敗や性暴力などによる望まない妊娠を防ぐ緊急避妊薬について、処方箋なしに薬局で買えるようにするための検討を始めています。薬局で購入しても、薬を適切に使える仕組みづくりが課題となっています。
2011年に国内で承認された緊急避妊薬は、性行為から72時間以内に服用すれば、一定の避妊効果がありますが、現行法上は医師の処方箋が必要です。世界の約90カ国では、処方箋なしで薬局で買うことができます。薬の効果を得るには、なるべく早く服用する必要があるのに、近くに医療機関がなかったり、休日や夜間で対応してもらえなかったりすることもあり、制度の見直しを求める声が相次いでいます。
政府が2020年12月に決定した男女共同参画基本計画は、専門の研修を受けた薬剤師の十分な説明の上で対面で服用することなどを条件に、処方箋なしでの緊急避妊薬の適切な利用を検討すると明記しています。薬剤師による説明や面前での服用を条件としつつ、処方箋なしに緊急避妊薬を適切に利用できるようと踏み込み、具体的に販売方法を検討する方針を示しています。
制度の見直しにあたっては、緊急避妊薬の避妊効果が100%ではないこと、あくまで避妊に失敗した時の緊急用で、服用後に避妊せずに性交すれば妊娠する恐れがあり、性感染症を防げるわけでもないことを、ユーザーがよく理解することが大切です。薬の特性を考えれば、処方箋なしに薬局で適切な説明後に購入できるようなシステムづくりが求められます。緊急避妊薬を扱う知識を得た薬剤師がいる薬局は、4月30日時点で全国6千カ所を超えるとされています。さらに薬剤師に対する研修を進め、全国の薬局で販売できることが必要となります。

(2021年6月8日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。