子宮移植を考える―Ⅹ

子宮移植にあたっての留意点―②
 免疫抑制法の進歩により、ドナーとレシピエント間の医学的な制約はほぼ克服され、金銭等の利益供与を回避する観点も含めて両者の関係性について、それぞれの国の指針、法律が策定されています。わが国では、日本移植学会倫理指針において、生体臓器移植のドナーについては、「親族に限定する。親族とは6親等内の血族、配偶者と3親等内の姻族を指すものとする。」と規定されています。近親者以外の場合は、当該医療機関における倫理委員会において有償提供の回避および任意性の担保に留意して検討し、そのうえで日本移植学会の倫理委員会においてその妥当性を検討することとされています。子宮移植も生体間移植となることがほとんどであると考えられることより、倫理指針を尊重しなければならなくなります。
 レシピエントの安全性についても、全身麻酔、移植およびその手術、さらに免疫抑制療法の安全性を確保するよう努めなければなりません。麻酔および手術における安全性を確保し、合併症について予防対策を講じることはもとより、子宮移植における安全性や術後妊孕性についても言及することが大切です。免疫抑制法の選択、その副作用、特に骨髄抑制と感染症に対する対策、移植後糖尿病に対する対策と治療、より長期的には移植後リンパ球増殖症あるいは悪性腫瘍に対する対策などに万全を期する必要があります。

(吉村 やすのり)

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