子宮頸がんワクチン接種後の健康被害を訴える15~22歳の女性57人が、国と製薬会社2社に総額約8億5,500万円の損害賠償を求める集団訴訟を東京、名古屋、大阪、福岡の4地裁に起こしました。7月に続く2次提訴で、原告は4地裁で計119人になりました。訴状では、国が有用性のない医薬品を承認し、定期接種の対象にしたのは違法で、製薬会社には製造物責任があるとしています。
こうした裁判はわが国だけにみられる現象です。現在のところ、原告の主張する症状とワクチン接種の間には科学的関連性は証明されていません。新聞やマスコミの報道をみていると、こうしたワクチンの副反応を主張する人々の声だけが強調されているように思います。副反応を訴えている人々の救済は極めて大切です。国も日本医師会も救済の手をさしのべています。このままワクチンの接種に関する国の考え方が示されなければ、日本の常識が世界の非常識になってしまいかねません。今わが国にとって大切なことは、一日も早く厚生労働省の副反応検討部会において、子宮頸がんワクチン接種の評価に関する検討が再開されることです。
(2016年12月15日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)