孤独・孤立対策としてのAI

孤独は現代社会を象徴する問題の一つです。内閣官房が2023年に実施した調査によれば、孤独を感じると回答した人は39.3%にのぼり、若年層やひとり暮らしの比率が高いという結果が出ています。国立社会保障・人口問題研究所によれば、男女の未婚率(50歳時点)は、2020年に男性で28.3%、女性で17.8%にも達しています。
現実社会やネット上のSNSで孤独を感じる人の対話相手として登場し始めたのが、ユーザーに寄り添う人工知能(AI)です。人間よりもコンピューターに本音を打ち明けてしまう事象は古くから知られています。人間ではないからこそ恥ずかしさを感じさせず、心理的ハードルを下げられます。コンピューターの対話能力を向上させているのがLLMという生成AIの進化です。
時間や場所を問わず、いつでも対話できるAIの活用は孤独を和らげる手段の一つになります。しかし、ネットと同様にAIそのものに依存するリスクも否定できません。米ジョージア大学などの国際研究チームの調査によれば、機器設計など個人主体で取り組む業務にAIを使用すると孤独感が強まり、不眠症や飲酒を招きやすい傾向があることも分かっています。AIが人の感情にもたらす作用はまだ未知数です。

(2024年4月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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