生産年齢人口の枯渇

日本の働き手が枯渇してきています。今は職に就かず、仕事を希望する働き手の予備軍は2023年に411万人で、15歳以上のうち3.7%にとどまり、割合は20年で半減しています。女性や高齢者の就業が進み、人手の確保は限界に近くなっています。
総務省がまとめた労働力調査によれば、15歳以上で職に就かず仕事を探していないが、就業を希望する人は2023年に233万人と、20年前に比べて297万人減っています。予備軍が減ったのは、景気回復とともに、女性や高齢者が働く環境整備が進んだためです。国立社会保障・人口問題研究所によれば、15~64歳の生産年齢人口はピークだった1995年に比べ、2023年は15%減少しましたが、就業者は20年間で約400万人増えています。結婚や子育てで女性が職を離れ、30代の就業率が下がるM字カーブ現象もほぼ解消しました。働き手の減少を女性や高齢者で補うのは限界に近くなっています。
企業も戦略の転換を迫られます。低金利による借り入れ負担の軽減と、非正規で働く女性や高齢者の活用はコスト低減の柱でした。低収益の事業でも存続しやすくなり、景気回復下でも賃金が上がらないデフレの色合いを強めています。日銀のマイナス金利解除に伴い、金利には上昇圧力がかかります。人手不足で採用ができず、非正規の時給引き上げが続けば、低採算の事業は選別し撤退をせざるを得なくなります。
課題解決のカギを握るのは、労働生産性の向上、雇用の流動化、外国人参画の3つです。労働生産性が年1ポイント上がれば不足の7割程度を補えるとされています。人材の獲得競争は、賃金の上昇を通じて消費を刺激し、企業収益を増やす好循環につながります。働き手の減少を和らげるには、外国人材の活躍も大切です。

 

(2024年4月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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