少子化対策とその効果

わが国と同様、少子化に苦しむ先進国においても様々な少子化対策が講じられています。カナダなど先進国を対象にした研究からは、現金給付を1%増やすと出生率を0.1~0.2%上げる効果がありますが、給付の増加は子ども1人への支出を増やす方向にも働くことが分かっています。
一方、2000年代の旧西ドイツ地域では、子ども1人あたりの保育所枠を示す保育所定員率が10ポイント増えると、出生率は2.8%上昇しています。同額の予算を給付増に充てるより5倍の効果がみられています。待機児童を抱える東京など都市部で特に有効と思われます。
女性に偏る子育て負担の軽減策も重要です。子どもを持ちたいかどうかの夫婦の意見に着目した研究では、欧州では男性が子育てに参加する国ほど出生率が高い傾向がみられています。
わが国の異次元の少子化対策は、現金給付に重きをおいていますが、現金給付のみならず、ジェンダー平等など意識の改革、女性の子育て支援、働き方改革など若い世代に対する総合的支援が大切となります。自治体ごとに有効な少子化対策は異なりますが、各地で対策の効果や検証データを蓄積して共有することにより、難局を乗り切るしかありません。

(2023年5月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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