待機児童の急減

認可保育園などに入れなかった今春の待機児童が大幅に減少しています。国は2001年以降、待機児童問題の解決策として、定員拡充を中心とした受け皿整備を進めてきました。東京都内では、認可園がここ数年年間150~200園ずつ増えて、2021年は3,477園となり、20年前の倍に達しています。一方で、コロナ禍の預け控えなどの影響もあり、0歳児の定員割れが相次いでいます。
0歳児の欠員は、保育園経営に大きな打撃です。在籍児童数などに応じて国や自治体から支払われる運営費の単価が、他の年齢の園児より手がかかる分、高く設定されています。保育士の配置人数も多く、定員に達しなければ、保育士の人件費などの一部は入ってこなくなってしまいます。都民間保育園協会の調査によれば、0歳児の定員割れは、昨年の9月時点で1,783人で、このうち23区が約8割を占めています。
少子化や、コロナ禍による雇用の縮小で、保育ニーズがしぼみました。しかし保育園が子どもの発達や子育て世帯に寄与する役割は大きく、待機児童が今年減ったからといって、保育士や保育園などの保育リソースを安易に減らすべきではありません。家族の形や働き方が多様化したいま、フルタイム就労ではない人、家庭で子どもを育てることに不安や疲れを感じる人にも、保育が必要になってきています。
待機児童の対策として、定員の拡大や保育園の新設など数の整備が重視され、そこに一定の成果はありました。しかし、これまで保育園は、働く保護者のための労働施策の一環として考えられていました。そこには、子どもがどう育っていくのかという視点は欠けており、課題が残ります。待機児童の数だけではなく、保護者が子どもを預ける場所として、保育園の柔軟な活用や一時預かりなど、細かいニーズに対応できるような制度設計も求められています。

(2022年7月13日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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