待機児童問題に憶う

 待機児童の数を政府が発表し、対策を始めたのは1995年です。それから21年も経っているのに問題は解消されておらず、ここ数年逆に増加しています。それは、政治力がある高齢者の方に予算が流れて、政治力がない子育て世代には予算が使われないことによります。今年の1月には、低所得の高齢者に13万円を給付する補正予算が成立しました。約3,600億円という額は、保育士の給与を全産業なみにするために月10万円引き上げるのに必要な年間予算とほぼ同額です。保育所を増やすためには、保育士のなり手を掘り起こすことが重要で、そのカギは待遇改善です。子育て世代は、高齢者向け予算を少し削ってほしいと訴える資格があると思います。
 待機児童問題がいっこうに解決しない背景にあるもう一つの問題点は、育児は女性の役割という男性側の根強い意識だと思います。いわゆる性別分担意識です。男性が育児を自分達の問題と捉えていないから、社会全体に共感が広がりません。男女にかかわらず働き方を状況に応じて柔軟に変えることができる制度が必要です。子育て時にはフルタイムの働き方を緩め、子育てを終えればフルに戻れるといったような働き方を導入すべきです。安倍政権は、三世代同居を進めて子育てや介護を家庭に任せようとしています。しかし、都会で働く地方出身者にはできません。規制緩和や保育士のわずかな給料アップなどの小手先の対策だけでは、待機児童問題は解決しません。働き方を含めて社会の、男性の意識を、どう変えるのかという根本的な戦略が求められます。

(吉村 やすのり)

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