心の性について考える

トランスジェンダーとは、自分の性別が出生時の性別(戸籍上の性別)とは異なると感じている人を指します。性的関心の対象による異性愛、同性愛とは別の概念です。一方、性同一性障害は精神科の疾患名です。トランスジェンダーの中には、違和感や苦痛を改善するために身体的な治療に進む人が少なくありません。戸籍上は男性ですが、自分の性別を女性だと認識しているトランスジェンダーに対して、女子大への受け入れがさまざまな大学で検討されています。
性別には社会的、医学的に多様性があることが分かっており、トランスジェンダーの受け入れは、多様性を包摂する社会の対応として当然と思われます。女子大では、学則で入学資格を女子と規定されており、これまでは戸籍上の性とされてきました。今後は入試の出願資格を「戸籍または性自認が女子」と変更する必要があります。受け入れにあたっては、医師の性同一性障害などの診断書の有無、必要性の有無が検討されることになります。
日本学術会議の分科会は、「性的マイノリティの権利保障をめざして」との提言を昨年まとめています。それによれば、教育機関に対し、通称名の使用やトイレ、体育・健康診断での配慮、カウンセリング体制の充実などを要請しています。進路指導をする高校の側にも正しい知識が求められます。学生にとっても、大学に自分の存在を認められることになり、意味は大きなものがあります。
現在、諸外国では法律で同性婚を認めるなど、より強い形で性的マイノリティの権利を保護しています。主要7カ国でそうした法整備をしていないのは日本だけです。性的少数者が自分らしく生きられる社会づくりは、まだ緒に就いたばかりです。心の性別が女性であるトランスジェンダーの女子大入学により、例えば「一緒に着替えるのは抵抗がある」といった声が学生から出るかもしれません。性の認識や家族の姿に正解はありません。多様な考えや生き方があり、それを認め合うことにより、人権が守られ、誰もが生きやすい社会につながります。

(吉村 やすのり)

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