心の病の理解と対応―Ⅰ

思春期にはじまる病気
2022年4月から、高等学校の教科保健体育に、新たに精神疾患の予防と回復の項目が盛り込まれることになりました。教科書にうつ病、統合失調症、不安症、摂食障害の精神疾患名や、その症状、対処が記載されています。精神疾患の多くが思春期や青年期前期までの若年において発症することは、あまり認識されていません。わが国においては、若年者の自殺がいまだ減少しないことや、その背景に精神保健の様々な課題の存在がうかがわれることなど、精神疾患は子ども達にとっても大きな健康課題になっています。

思春期は、心身ともに成人に向けて発達する時期です。生物学的にも極めて不安定な時期にあり、心の発達を支える脳神経系が大きく成長を遂げる時期でもあります。思春期は人生の発達段階としても新たな刺激に富んでいるとともに、また将来関係が拡大し、また将来への希望や重圧が交錯するなど、心的環境変化の活発な時期とも言えます。
思春期の心の健康を考える際に、精神疾患への理解を外すことはできません。うつ病や統合失調症のような多くの精神疾患は、思春期から青年期にかけて好発します。これらの精神疾患の好発年齢は15歳から30歳くらいまでとされ、生涯のうちに精神疾患に罹る人のうち75%が25歳未満で発病しているという報告もあります。精神疾患を発症するメカニズムについては不明な点が多いのですが、精神疾患は脳機能障害であり、体質あるいは脆弱性と、生育・生活環境における様々なストレスとの相互関係が発症を規定していると考えられています。

(よぼう医学 2022 AUTUMN)
(吉村 やすのり)

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