心不全パンデミックの増加

心臓の機能が低下する心不全の患者が急増しています。高齢化の影響だけではなく、2022年は、新型コロナウイルス流行の余波で心不全で亡くなった人が1割増え、10万人に迫っています。海外でも増加しており、感染症のパンデミックの裏で、心不全パンデミックが静かに広がっています。

増加の要因は3つ考えられます。1つ目は、コロナに感染して軽症でも、持病の慢性心不全が悪化したことによります。特に高齢者にとって、インフルエンザと同様に呼吸器感染症は、心不全を増悪させます。2つ目は、感染対策で心不全だった患者が受診を控えたり、医療機関を受診できなかったりしたことです。3つ目は、救急医療の逼迫です。急性心筋梗塞などに比べると、心不全の救急患者を受け入れるハードルが高かったかもしれません。
入院した心不全の患者の半数は、4年以内に亡くなっており、がん全体の5年生存率の約7割より低くなっています。心不全は、入院を繰り返して最終的に亡くなるという危険性の高い病気です。心不全は、あらゆる心臓疾患の終末像と言われ、不整脈や狭心症、弁膜症、心筋症などが原因となって、心臓の機能が低下します。
治療薬は増えましたが、心不全を発症すると、次第に悪化していきます。そのため大切なのは予防です。心臓疾患の原因となる高血圧、糖尿病や動脈硬化などの治療と生活習慣の改善が大切になります。コロナ禍で酒席が減ったことなどで体調が改善した人がいる一方、運動不足や間食が増えるなど生活習慣が悪化した人もおり、二極化したています。

 

(2023年6月24日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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