性交同意年齢の引き上げ

2020年には、15歳以下での出産は116件、人工妊娠中絶は411件でした。出産したのは妊娠に気づくのが遅かった、または気づいても誰にも相談できないうちに医療へのアクセスが遅れ、22週を過ぎて中絶ができなかったケースが多かったと思われます。実際10代と他の年代の人工妊娠中絶週数を比べると、10代は妊娠週数が大きくなってから中絶する傾向があります。つまり正しい知識がないために、妊娠に気づくのが遅れたり、医療にアクセスできなかったりする状況が分かります。
性行為について同意を判断できるとみなす年齢を性交同意年齢と言います。日本では法律(刑法)によって13歳と規定しています。13歳以上ならば、性行為に関して判断能力があるとみなされているのです。性交同意年齢を13歳とするなら、本来は12歳までに性交に関する教育を全て終了しておくべきなのに、実際の日本では12歳で性教育が終わるどころか、中学卒業までに性交について教えていません。
性交同意年齢は、イギリス、カナダ、ベルギー、オランダ、フィンランド、韓国などで16歳です。フランス、スウェーデン、ギリシア、ポーランドなどは15歳、ドイツ、イタリアなどは14歳となっており、日本の13歳という年齢は際立って低いことが分かります。現在、ようやく性交同意年齢に関して引き上げの動きが出ていますが、性教育の実態とセットで考えていくべきです。
エビデンスを提示しながら科学的に性教育を実施した国では、性交開始年齢が遅くなり、さらに性感染症予防や避妊行動が増加するというデータがあり、若年者の妊娠・出産数が減少するということも評価されています。さらにこうした国々では、性交同意年齢の前に性教育を終えるように、実態と教育にギャップが生じないように定めています。

(2023年3月1日 月刊母子保健)
(吉村 やすのり)

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