摂食障害の増加

国内の摂食障害の患者数は、医療機関にかかっている人だけで22万人と推測されています。 病気の自覚がなく通院していないケースは多く、潜在的な患者も少なくありません。 9割は女性で、特に若い世代が多く、低血圧や低血糖、内臓の障害などを引き起こし、命を落とす恐れもあります。
様々な症状があり、瘦せるために食べる量を極端に減らす神経性やせ症(拒食症)、過剰に食べ続けて嘔吐を繰り返す神経性過食症が代表的です。食べることへの無関心などから、栄養不足になる回避・制限性食物摂取症の症状もあります。
国立成育医療研究センターの実態調査によれば、2022年度の初診外来で摂食障害の一つ神経性やせ症と診断された20歳未満は、全国23病院で276人に達しています。2020年度の313人や2021年度の319人に比べやや改善していますが、コロナ前の2019年度の199人の約1.4倍と高止まりが続いています。年代別では中学生が最も多くなっています。感染症対策として食事に関わる様々な制限もあり、結果的に食べることへの不安や食事量の減少につながった可能性があります。
SNSの影響も指摘されています。SNSを使う女児が痩せ願望を抱く比率は、SNSを使ったことがない女児の1.9倍で、頻繁に利用するほど高まる傾向がみられています。痩身を美化する情報に触れることで、不特定多数に評価されるモデルのような体形に近づきたいと思っています。動画などで顔や体形を見せる人が増え、痩せ願望への影響は大きくなっています。
成長期の摂食障害は、栄養不足などから身長の伸びが止まる恐れがあります。女性は、無月経になることも懸念され、骨粗しょう症など様々な合併症を起こすリスクもあります。発症前の兆候として、炭水化物や揚げ物を拒む、体重が減っても太っていると言い張る、1日に何度も体重計に乗るなどが挙げられます。

 

(2024年2月14日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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