政府が目指す労働改革

政府の新しい資本主義実現会議は、労働市場改革の指針をまとめています。企業には、従来の働き方の見直しを求め、働き手には学び直しを通じて専門技能を身に付けてもらいます。結果として、低迷する賃金の上昇につながることが期待されています。
指針には三つの柱があります。一つ目は、職務を明確にして賃金に反映させるジョブ型雇用の導入です。職務内容と求める技能を明確にして従業員を雇う仕組みですが、指針では、導入する企業を増やすために、ジョブ型の人材募集や育成方法といった事例を紹介します。
二つ目の柱は、転職を促す労働移動の円滑化です。現在の失業給付は、会社都合で離職した場合、申請から7日後以降に支給されますが、自己都合では最大3か月後からとなります。就職と離職を繰り返さないように、自己都合には制限をつけていましたが、2024年度にも制限を見直します。退職所得控除と呼ばれる退職金にかかる所得税の減税措置も、勤務が長いほど優遇する仕組みを見直します。
最後の柱が、働き手の能力を向上させるリスキリングの支援です。政府は、データ分析やプロジェクト管理、観光・物流といった成長が見込まれる分野を想定し、学び直しを支援します。
政府が労働市場改革に力を入れるのは、賃金が過去30年間、ほとんど増えなかったことが背景にあります。物価上昇を上回る賃上げの継続が、成長に欠かせません。そのためには、企業が働き方を見直し、賃上げに必要な原資を増やす必要があります。改革はスキルの高い人だけでなく、全ての働き手を対象にすべきです。成功させるには、企業と働き手の意識改革が欠かせません。

 

(2023年5月20日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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