教育虐待の増加

都市部を中心に中学受験熱が高まってきています。大手学習塾によると、1都3県で2019年度の中学入試を受けた小学生は、全体の約20%で推計約6万5,500人に達しています。受験生の大半は、入試まで約3年間週3~5回塾に通い、自宅で学習します。受験するのが小学生だけに、大多数の家庭が親主導で中学受験に取り組んでいます。親の自分が頑張れば、我が子も憧れの難関校に手が届くのではないかといった極端な思考に陥り、子どもの学力向上を名目に過度に叱責したり、暴力を振るったりする教育虐待が近年問題になっています。
教育虐待が起きる背景は、親が自分の価値観を子どもに押し付けることです。子どもが我慢できる範囲を著しく超えているのが特徴で、教育熱心さとは一線を画しています。また教育虐待に陥る親は、生活への不安や不満、自身のコンプレックスを、子どもにぶつけているケースが多くなっています。我が子を自分の学歴コンプレックスを解消するための手段にするケースもあります。
しかし、親の頑張りは子どもの学力に直結しないと認識すべきです。親にできるのは、子どもが気持ちよく頑張れる環境を作ることだけです。親は教育のプロではないと自覚することも大切です。それでなくても受験勉強は子どもに強いストレスを与えます。親は我が子の心の状態に常に気を配り、少しでもおかしな兆候を感じたら、迅速に対応することが必要です。

(2019年7月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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