新型出生前診断(NIPT)の現状と問題点―Ⅴ

NIPTにおける遺伝カウンセリングの意義
NIPTは母親の末梢血採血によって行う比較的簡便な検査ですが、胎児の染色体情報を取り扱う遺伝学的検査です。したがって検査を受ける際には、検査や遺伝に関する知識、ダウン症など検査対象疾患への正しい理解が、妊婦・パートナーなどのクライエントには必要です。さらに、何よりも生命の存続の決断に直結している検査であるため、クライエントに寄り添った医療の提供が望まれます。
また、3つの染色体疾患(21トリソミー、18トリソミー、13トリソミー)に限られた検査ですので、陰性結果が得られた場合でも胎児が他の疾患に罹患していないという保証はありません。先天性疾患に罹患している子を授かる確率は、母体年齢にかかわらず一律3~5%あり、その半数以上は染色体疾患ではありません。しかしながら、NIPTの受検を希望される方々の多くが、高齢妊娠やダウン症にのみ注目しているため、これらの事実に気づいていないのが現状です。
これらに関する正確な遺伝学情報の提供を含めた対応を行うのが、遺伝カウンセリングという医療行為です。遺伝カウンセリングとは遺伝性疾患がもたらす医学的・心理的な家族への影響・課題に対して、当事者がそれを理解し、適応するのを援助するプロセスであり、臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラーなどの遺伝医療の専門職が担当します。

(母子保健 2018年10月号)
(吉村 やすのり)

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