更年期ケアの重要性

女性は50歳前後に閉経することが多く、45~55歳頃を更年期と呼びます。女性ホルモンの分泌が急減し、疲労や頭痛、めまい、いらいらなどの症状が出やすくなります。うつ状態になる場合もあります。
総務省の労働力調査によれば、45歳以上の女性正社員は2022年に初めて500万人を超えました。このうち管理職候補になりやすい45~54歳は、307万人にものぼります。同年代の働き手に占める女性比率は2022年に31%で、10年間で約3.6ポイント上昇しています。人口が減る中、この層の健康サポートが、企業の生産性にもかかわります。女性の更年期症状による離職経験者は、3年間で約46万人にのぼるとされています。推計の経済損失は年4,200億円にも達します。
企業が50歳前後の女性社員の健康支援に動き始めています。野村不動産は、4月に更年期の体調不良で、休みをとれる新制度を導入しています。アイシンはオンライン診療や漢方薬を利用しやすくしています。世界でも更年期症状の克服は大きな課題となっています。米国では、AIによる症状の管理アプリを開発した米ミッディヘルスなど、更年期症状の緩和につなげるメノポーズテックが注目され始めています。
日本の女性管理職比率は13%で、先進国で最も低い水準です。人口が減る中、管理職や役員の候補となるミドル、シニア女性が活躍しやすい制度づくりは、日本の産業力にも直結します。人口の多い団塊ジュニアを含む更年期世代が、働く女性の4分の1を占めるまでになっています。同世代の離職を減らして生産性を高めるためにも、健康を支援する経営が欠かせません。

 

(2023年5月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。