未診断疾患イニシアチブ

 国立・神経医療研究センターなど全国の16医療機関は、診断がつかない成人患者のゲノムを網羅的に解読し、原因遺伝子を突き止める未診断疾患イニシアチブを始動しました。患者に共通する遺伝子変異を見つけ出し、まれな病気の診断や治療法の開発につなげることを目的としています。新たな枠組みでは、主治医が東京大学や大阪大学などの拠点病院に紹介します。拠点病院は診断委員会を設けて詳しく調べ、それでも診断できない場合、慶應大学か横浜市立大学に患者の血液サンプルを送ります。
 慶應大学などのゲノム解析センターでは、血液サンプルを用いてたんぱく質の設計図となる配列を全て解読し、変異している遺伝子を特定します。先天性疾患の原因遺伝子を網羅したデータベースなどを参照し診断をつけます。データベースで診断がつかなければ、原因遺伝子がまだ見つかっていない病気である可能性が高くなります。同じ症状を持つ患者同士の配列を比較し、共通する変異を探索し、見つかればそれが病気の原因と考えられることになります。医師や製薬会社にとっては、まれな病気の原因となる遺伝子変異を効率よく発見でき診断や治療法の手掛かりが得られる利点があります。慶應大学は今年、診断がつかない病気を診る未診断疾患外来を設置し、医師と遺伝カウンセラーが、患者や家族の相談に乗っています。

(2016年5月9日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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