母乳栄養の効果

厚生労働省は、3月に12年ぶりに授乳・離乳の支援ガイドを改定しています。生後1カ月と、同3カ月の子どもを母乳だけで育てる保護者はいずれも5割を超えました。複数の研究を踏まえ、母乳によって子どものアレルギーを予防する効果はないと初めて結論付けています。母乳の代わりに粉ミルクで育てたとしても、アレルギーのリスクが高まる可能性を心配する必要はないとしています。
しかし、栄養面などを考えた場合、母乳による育児が最良の選択肢であることは間違いありません。授乳・離乳の支援ガイドでも、母乳育児の利点として、①乳児に最適な成分で代謝の負担が少ない、②感染症の発症や重症度の低下、③肥満や2型糖尿病の発症リスクの低下の3点を挙げています。肥満が社会問題化している米国でも、改めて母乳育児の大切さが見直されています。
一方で、母乳が出ずに悩んでいる母親も多くみられます。育児用ミルクの活用に罪悪感などを持つ必要はなく、様々な選択肢があることを知っておくべきです。昨年8月に厚生労働省が省令を改正し、国内で乳幼児用の液体ミルクの製造が解禁されました。液体ミルクは、開封して常温のまま消毒した哺乳瓶へ入れるだけで済みます。母乳でなければならないと、母親が精神的負担を感じないようにするとともに、できるだけ母乳で育てられるように、社会全体が寛容になる必要があります。

(2019年8月12日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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