民間人材の教員への活用

わが国では、民間人材の教員への活用が進んでいません。教職課程を経ていない人を学校に迎える特別免許の授与件数は、一般の教員免許の0.1%にとどまっています。1988年創設の特別免許は、教職課程を経ていなくても、優れた知識や経験があり教職にふさわしいと都道府県教委が認めた人に与えられます。市町村教委や私立学校から申請・推薦された人らが対象で、学力検定結果などを踏まえて判断します。
海外は民間を経験した教員が多くなっています。中学教員の状況を調べたOECDの調査によれば、異業種で働いた期間がキャリアに占める割合は、英国では26%、スウェーデンでは24%で2割を超えています。大半が新卒一括採用の日本は5%と低率です。英国などは新卒採用に加え、社会人経験を柔軟に雇用し、民間との間で人材の流動性が高くなっています。オランダには、免許がない人が教育現場で有償で訓練を積みながら、正式な教員になれる仕組みがあります。
経験不足を不安視する教育委員会の姿勢が壁となり、海外と比べ教員の社会経験の多様性は乏しいと思われます。不足するデジタル人材の育成に向け民間の知見を生かす必要があります。時代に即した教育の実現のため戦略的に人材を探すことが重要です。働き方改革を進めつつ、スペシャリストとして活躍しやすい人事制度も検討すべきです。特別免許が機能しなければ教育界への道は狭く、人材のミスマッチが深刻化することになります。新たな教育課題に適応できる民間人を活用する制度への転換が求められます。

 

(2022年7月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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