災害リスク地域に住む人口の増加

国土交通省によれば、2050年には少子高齢化で全国の居住地域の約2割が無人になります。しかし、大地震や津波、洪水や土砂災害のいずれかに遭う恐れがある災害リスク地域の人口は全体の70.5%も占めています。2015年時点よりむしろ3ポイント近く高まっています。中山間地域などは過疎化で急速に人口が減る半面、沿岸部など災害リスクを抱えた都市部への人口集中が進むためです。
日本は森林が多く、住める国土面積は33%と、同じ島国の英国の85%などと比べて狭くなっています。憲法は居住移転の自由を保障していますが、代わりになる安全な地域は少なく、大規模な集団移転は容易ではありません。東京一極集中は、巨大災害リスクへの脆弱性が強調されていますが、是正策はなかなか見えてきません。
能登半島地震では住宅倒壊で多くの人が圧死しました。津波が押し寄せ、土砂崩れでも犠牲が出ました。私たちは災害列島で暮らしています。平時と災害時を区別しないフェーズフリーの概念を取り入れ、日頃から備える必要があります。いかに賢く、ゼロではない災害リスクと共生していくかが大切です。

(2024年2月12日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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