特別養子縁組における実母の心変わり

 実父母が育てられない子どもを、子どもが欲しい別の夫婦が迎え、戸籍上の実の親子になる特別養子縁組は、原則実父母の同意のもとに行われます。特別養子縁組は、同居後6カ月以上の試験養育期間を経て、家庭裁判所の審判で成立します。期間中は家庭裁判所や児童相談所の職員が家庭訪問したり、実母の意思確認をしたりします。その間、法律上は子どもはまだ同居人でしかありません。
 しかし、縁組成立前に実父母の気持ちが変わるなどして、子どもが育つ環境に影響することがあります。養育はできないものの、縁組には同意しないという実父母もいます。そうした子どもたちは、施設以外の場で育てられる機会を失うことになります。欧州では、養子となる子の利益を図る欧州養子協定に基づいて制度を整備しており、同意については出産前後に親の気持ちが揺れることを考慮し、出産後の一定期間は縁組の同意を取らない代わりに、いったん同意すれば撤回できない仕組みがあります。日本では、家庭裁判所の審判が確定するまでは、親はいつでも同意を撤回できる作りになっています。

(2017年9月8日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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