特別養子縁組の落とし穴

 厚生労働省は、生みの親が育てられない子どもが特定の大人から愛情を持って育てられるように養子縁組を推進しています。特別養子縁組とは、望まない妊娠や虐待などで生みの親が育てられない原則6歳未満の子どもと、血縁関係がない夫婦が法的に親子になる制度です。戸籍上も実子と同じ扱いになります。特別養子縁組をあっせんする民間団体が、育ての親(養親希望者)から不当なお金をもらったなどとして、事業停止命令を受けました。
 民間団体が増えており、透明性の確保が急務となっています。国から民間団体への資金援助はありません。多くの団体が、養親の負担金と企業からの寄付などで費用を賄っています。特別養子縁組成立には裁判所の審判が必要で、生みの親は成立まで同意を撤回できます。妊娠相談から成立まで1年以上かかる場合が多く、諸費用を立て替えることも多くなります。児童福祉法は営利目的を禁じており、厚生労働省は通知で民間団体が養親希望者から受け取れるのは実費以下としています。今後は営利目的の特別養子縁組をあっせんする民間団体が増えることが心配です。

(2016年10月4日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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