異次元の少子化対策に憶う―Ⅰ

岸田首相の打ち出した異次元の少子化対策は、児童手当などの経済的支援、サービスの充実、そして育休制度の強化を含む働き方改革です。児童手当を受け取れる世帯の拡大や増額、所得制限の緩和や撤廃に踏み込むかどうかが焦点となります。
児童手当は、現在0歳~中学生のいる世帯が対象で、原則1人あたり月1万~1万5千円が支給されています。所得制限があり、子ども2人の専業主婦家庭の場合、夫の年収が960万円以上1,200万円未満の世帯は月5千円の特例給付となり、年収1,200万円以上は対象外です。対象年齢の18歳までの拡大や、第2子は3万円、第3子は6万円まで増額するよう求める声があります。しかし、実現には数兆円の財源が必要となるため、国民の負担増の議論は避けられません。さらに制限の撤廃には、年1,400億円の財源が必要となります。
二つ目の柱が、全ての妊産婦・子育て家庭が利用できるサービスの充実です。待機児童は解消に向かっていますが、全国各地で不適切保育が相次ぎ、保育の質の低下が問題となっています。また、出産を終えたばかりの母子の心身のケアや育児をサポートする産後ケア事業も道半ばです。
第三の柱は育児休業の強化です。子育てをしながらフルタイムで働くことが困難なため、仕事か子育てかの選択を迫られる問題があります。仕事と育児を両立できるよう、子育て中の残業免除や時短勤務、テレワークを組み合わせた柔軟な働き方ができる仕組みづくりを目指しています。
いずれも少子化対策として重要な政策と思われますが、これにより子育て世代が直面する課題は解消されるとは思われません。妊娠・出産・子育てを通じて、切れ目なく必要な社会的支援が包括的に提供される制度の構築が急務です。

(2023年1月25日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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