異次元の少子化対策に憶う―Ⅱ

政府が異次元と銘打って少子化対策を急ぐ背景には、コロナ禍で加速した出生数の減少があります。2022年の年間出生数(日本人のみ)は統計上初めて80万人を割るのが確実で、コロナ禍前の2019年から1割ほど減りそうです。過去3年の出生率の低下ペースが進んだ場合、2080年の出生数は55万人まで減るとされています。
日本は低成長が続き賃金上昇率も低迷しています。内閣府がまとめた少子化に関する意識調査によれば、子どもを増やしたくない理由として、お金がかかり過ぎるを挙げた人は日本で5割を超え、2割台だったフランスやドイツを上回っています。金銭的な不安がハードルになっており、希望出生率もアベノミクス時代の1.8より1.59に低下しており、出産への意欲の後退が進んでいます。具体策としては、乳幼児期だけでなく大学まで含めた教育費への支援や、子育て世帯への住宅支援が求められます。
少子化に直面してきた欧州は、男性の育児参加や育児中の女性が働きやすい環境づくり、多様な家族形態を容認する制度設計を進めてきました。フランスやデンマーク、スウェーデンでは、婚外子が一般的で、フランスは1台後半の出生率を保っています。家族の多様な形を受け入れる社会が少子化の抑制につながります。異次元の少子化対策に向けて日本の慣習を見直すほどの改革議論も避けて通れません。

(2023年1月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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