病理診断の改善策

 千葉県がんセンターで、昨年12月に別の患者の検体と取り違えて乳がん患者の乳房を誤って全摘出した事故が起こりました。原因として、検体を取り扱う病理部門の脆弱な体制があげられます。病理医の不足に悩む病院は多く、どの病院でも危機感は強いものがあります。問題が起きた背景として、がん患者の増加などで、2014年の病理診断件数が2005年比で2倍以上に増えたにもかかわらず、人員不足が放置されていたことがあげられます。そのため、日本病理学会は初めて取り違え防止のためのマニュアルを作成しています。取り違え防止に向け、ラベルには患者名をフルネームで記入、IDも加えるなど2つ以上の情報を記入し、検体が検査室に送られてきたらその場で搬送者とともに1検体ずつ確認、患者が異なる複数の検体を同時に扱わないよう求めています。
 病理診断の遠隔支援も行われています。これはデジタルパソロジーと呼ばれます。診断に使う標本は、サーバーに保存するため、患者を担当した女性病理医が産休・育児休業中でも、自宅にいながら診断を巡る会議に参加できるようになります。現場とのつながりを保ち、休業後に復帰しやすくなります。病理医が他病院の症例に携れば、幅広く経験を積むこともできます。現在、病理医が減少し、高齢化も進んでいます。病理診断は遠隔支援が可能ですが、より多くの女性医師の参入が期待できます。

(2016年8月21日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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