看取りクライシス―Ⅲ

医師の偏在と不足
医師不足で医療圏に空白地が広がっていくと、生活基盤が揺らぎ、その地域で暮らし続けることが困難になります。これは、都心部に医師が集中することで起こる医師偏在によるものです。国は地域医療を守るため、地方での医師の確保や、一人で何役もこなせる総合専門医の養成に乗り出しています。厚生労働省の調査によれば、人口10万人あたりの医師数などで試算した医師偏在指数が、最も高い東京都は329だったのに対し、最も少ない岩手県は169.3と、半分ほどです。
厚生労働省の2036年時点の将来推計によれば、全国で最も不足が予想されている新潟県は、医師が1,534人足りなくなる見込みで、県内全域で不足する危機にさらされています。中山間地域や半島といった地理的な要因や、医学部や大規模病院の所在の有無によって医師数の格差が起きてしまっています。
国は地方での医師確保を図ろうと、都道府県を通じて医学部生へ入学時から奨学金を貸与する地域枠を2008年度から導入しています。しかし、国から大学へ地域枠として定員が追加的に割り当てられていたにもかかわらず、奨学金の希望者がいなかったという理由で貸与がなされず、結果、地域枠により広がった定員で合格した学生が、地域勤務の義務を課されないケースが出てきています。また、地木枠により、出身大学の所在する県にとどまっていても、大学病院で勤務するケースが多く、医師不足に直面している僻地で勤務するとは限らない現状も問題視されています。

(Wedge September 2019)
(吉村 やすのり)

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