社会保障制度改革の必要性

 2016年の出生数は、98万人前後と推計されており、明治期の統計開始以来、初めて100万人を割りこむことになります。このままでは、総人口が今の12,700万人から2060年には8,700万人にまで減り、高齢化率は4割以上になってしまいます。労働力人口も50年には3分の2に縮小します。この人口減と超高齢化の克服は、日本が直面する大きな課題です。人口減を抑えるとともに、働き手を増やさなければ、人口増加を前提とした現在の社会保障制度は行き詰ってしまいます。
 わが国にみられる仕事と家庭の二者択一を迫られる正社員の働き方は、女性のキャリア形成や男性の家事・育児参加を阻んできており、少子化の一因となってきています。一方、非正規雇用の賃金水準は正社員の6割前後であり、労働者全体の4割を占めており、特に若年層に広がっています。経済的理由で結婚や子育てをあきらめる若者の増加が、少子化を加速させています。無論、保育・介護サービスの拡充は重要です。さらに、保育・介護サービスの人材確保に向けた処遇改善策などは先行して実施すべきであり、恒久財源の確保が急務です。しかし、それだけでは女性の活躍や出生率向上は到底望めません。
 消費税率10%への引き上げが再延期され、社会保障・税一体改革は再構築を迫られています。膨張する医療・介護費の抑制は、超高齢社会に耐え得る社会保障制度を構築する最重要ポイントです。医療の質を低めることなく、費用を抑える改革を進めねばなりません。高齢者を含め、経済力に応じた負担を徹底することも重要です。高齢者の反発を恐れ、改革の手を緩めることは許されません。高齢者に対する医療・介護支援から家族関係社会支出への財源の移行が急務です。

(吉村 やすのり)

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