科学技術力と株価との溝

リチウムイオン電池を開発した旭化成の吉野彰・名誉フェローがノーベル化学賞を受賞することが決まりました。自然科学系のノーベル賞の受賞者数は今世紀に入って18人と、米国に次ぐ堂々の世界2位です。今や受賞者の10人に1人以上は日本人(米国籍含む)というノーベル賞大国になっています。しかし、この科学技術力が企業の株価に反映されていません。市場に経営無しの疑いがくすぶるのは、世界がうらやむほど技術を持つ割には、株価が世界に見劣りしています。経営者が、技術を成長に十分結びつけていないとの指摘があります。
経営要因による株安を示す際に用いられる指標が、株価純資産倍率(PBR)です。株が資本金など純資産よりどれだけ高く買われているかを倍数で示しています。経営者が企業の価値をどれだけ高めてくれるかという、株価市場の期待値です。日本の場合、9月末時点で全上場企業の50%のPBRが1倍を下回っています。失望される企業が各国より多い事実は見逃せません。日本を除く主要6カ国を見ると、1倍割れ企業の割合は、ドイツの27%からカナダの49%の間に収まっています。技術を収益化して、買収者が二の足を踏むほど株価を割高に持って行き、自らを守るのが上場企業のあるべき姿と思われます。

 

(2019年10月22日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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