育休延長の問題点

 育児休業などの両立支援は、1992年に導入されました。何度かの見直しで内容が充実し、法定を上回る規定を設ける企業も増えてきました。原則子どもが1歳になるまで、最長で1歳半までという育休の期間をどう考えるかが、現在議論されています。この背景には、待機児童の問題が解消せず、子どもの預け先が見つからない親がたくさんいることがあるからです。しかし、休みが長くなるほど、復帰へのハードルは上がります。キャリアを積み、力を伸ばすチャンスも得にくくなってしまいます。
 一方、自治体からは、保育所に入れなかったときに限らず、希望すれば全員が長く休めるようにすべきだとの声が根強くあります。早くから預けずにすむよう育休の取得促進と期間延長を求める意見は多くみられます。その理由は、コスト論です。低年齢の子どもの保育には人手がかかります。育休中の親には雇用保険から給付金が出ますが、保育のコストに比べれば、給付金のほうが少なくて済みます。自治体からすれば、育休を長期間取ったほうがコストがかかりません。しかし長期の育休で女性がキャリアを積む機会が減ってしまえば、本人の将来に響くだけではなく、社会全体で女性の活躍が進みにくくなる可能性があります。仮に育休を延ばしたとしても、子どもの育児はその育休の期間だけで終わるわけではありません。
 大事なことは、硬直的な長時間労働を見直し、柔軟な働き方を広めることです。育休の延長は、対象者が少ないため、手を付けやすい課題ともいえます。働き方改革はすべての働き手にかかわることであり、容易ではありません。育休だけが先行すると、女性の活躍のために解決すべき本質的な課題をマスクしてしまうおそれがあります。

(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。