脳動脈瘤の治療の進歩

 脳動脈瘤は、12ミリの小さなタイプから30ミリを超える大きなタイプまであります。多くは自覚症状が無く、国内では約500万人が患っているといわれています。脳ドックなどでMRIで検査し、脳動脈瘤に気づく人が増えています。瘤が破裂するとくも膜下出血を起こし、命を落とすリスクが高くなります。体のマヒや言語障害、視覚障害などの後遺症で悩む患者もおり、早期発見と治療が大切です。瘤の大きさが7ミリを超えると破裂する危険性が増します。高血圧や喫煙は脳動脈瘤ができるリスクを高めます。
 1990年代には脚の動脈からカテーテルを入れ、脳動脈瘤の中に細いコイルの束を入れて血栓を作り、破裂を防ぐコイル式閉塞治療が普及しました。2010年代に入ると、コイルを脳動脈瘤内に入れても血流が再開しやすい欠点を克服するために、近くの血管をステントで覆って脳動脈瘤への血流を抑える手法も使われました。しかし、直径7ミリを超えるような大きな脳動脈瘤は血液の流入が止まらず、治療効果が上がりませんでした。国立循環器病研究センターは、大きな瘤を新型のステント(網状の筒)で治す医師主導の臨床試験を始めています。表面を厚さ20マイクロメートルのポリウレタンの2枚の薄膜で覆ったステントを使い、血流をしっかりと抑えることができます。この新型のステントは多孔化カバードステントと呼びます。

 

(2016年7月24日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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