脳深部刺激療法によるパーキンソン病の治療

パーキンソン病は、脳内で神経伝達物質を作る細胞が減ることで発症するとされ、筋肉のこわばりや手足が震えるなど運動機能に障害が出ます。高齢化で患者は増加しており、国内に約16万人、世界では約700万人とされています。進行を止める根本的な治療法は確立されていません。
近年、パーキンソン病に対して、新しい治療法である脳深部刺激療法(DBS)が試みられています。直径1㎜ほどの電極を手術で脳内に埋め、鎖骨の下に入れた刺激発生装置から電流を流します。この電流で脳の神経細胞の異常な活動を抑え、筋肉のこわばりや手足の震えを減らす仕組みです。パーキンソン病では、神経細胞の活動で生じる脳波に異常が生じます。DBSは、電流を流して異常な脳波の影響を抑え、薬が効いていない時の症状をやわらげることによって、寝たきりを脱するといった改善効果が見込めます。
新しい機器では、脳波を電極で捉え、異常を検知すると電流が流れるよう自動調整しています。医師の診察時には、刺激発生装置から脳波のデータを無線でタブレットに送ります。患者が専用のスマホアプリに入力する日々の自覚症状の情報と併せて、医師はデータに基づいて治療方針や薬を調整できるようになります。脳内で起きていることを心電図のように把握できます。自覚症状とも照らし合わせ、治療がうまくいっているかを評価しやすくなります。

(2021年10月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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