若いがん患者の妊孕性温存治療のための支援

AYA世代と呼ばれる15~39歳は、抗がん剤や放射線によるがん治療によって妊孕性が低下するリスクを抱えています。年齢やがんの種類によるものの、治療開始前に卵子や精子などを凍結保存する妊孕性温存治療により、将来の妊娠可能性を残すことができます。これまで妊孕性温存治療は自費診療で数十万円かかるため、国は、2021年度から都道府県と折半で治療費を助成する新たな制度を始めています。
これまで支援制度のなかった東京都と千葉県も、9月と11月にそれぞれ助成制度を立ち上げました。都は独自調査にもとづき、卵子などの凍結費用を上乗せ補助するほか、保管にかかる費用も年間3万円を上限に助成することにしています。都内2カ所に若い世代に特化した相談センターを開設し、情報提供や患者同士の交流にも力を入れています。2都県の開始で首都圏の1都3県すべてで助成制度が整いました。
がん患者の妊孕性温存治療は、年齢やがんの種類によって実施が難しいケースがあるほか、有効性も研究途上にあります。経済的支援策の充実の一方で、重要性を増すのが患者や家族への適切な情報提供です。若い世代の患者は、がん患者全体の2~3%程度と少ないため、専門医でも診療する機会は限られています。主治医が患者のニーズを見逃している可能性もあることから、埼玉県や神奈川県は、医療機関や住民向けの研修などを通じて制度の周知を図ることにしています。

(2021年11月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。