若年層の賃金の伸び率の鈍化

厚生労働省の分析によれば、給与水準は20代前半を100とすると、30代前半は1990年が151.0、2020年は129.4でした。伸び率は30年で14%縮んでいます。50代にかけての上昇も緩やかになっています。20代独身男性の実質可処分所得は、2020年に平均271.6万円と、1990年の318.7万円から15%減っています。健康保険や厚生年金保険の料率が上がり、社会保険料の負担額が29.4万円から49.8万円に膨らんだ影響が大きくなっています。
国際的にも日本の若年層の経済力は低く、OECDのデータをもとに計算すると、26~40歳の可処分所得は2.6万ドル(約350万円)と、米国(5万ドル)の6割に満たない状況です。欧州主要国よりも低くなっています。
国立社会保障・人口問題研究所の2015年の調査によれば、1年以内に結婚するための障害として、18~34歳の4割以上が結婚資金をあげています。厚生労働省によると婚姻数は、2019年に令和婚で一時増加した後、再び減少に転じています。2021年は50万組で戦後最少を更新しています。一方、実家にとどまる壮年層も増えています。親と同居する35~44歳の未婚者の割合は、2016年に16.3%と1980年の7倍超になっています。
婚外子の少ない日本は、結婚の減少が少子化に直結します。1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は、2021年に1.30と6年連続で低下し、出生数は81万1,604人と過去最少を更新しています。新型コロナウイルス禍からの経済の回復の遅れが結婚の妨げになり、負の循環が加速する恐れもあります。
経済の持ち直しが早かった米欧の一部は、出生数が回復に向かっています。米国の2021年の出生数は、約366万人と7年ぶりに増えています。出生率も1.66と前年の1.64から上昇しています。日本の少子化対策は、児童手当や保育無償化、育児休業の促進など子育て支援が中心ですが、賃上げなど経済環境を良くしていくことがまず必要です。

 

(2022年6月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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