薬剤費の増加

 医師が処方する医薬品の公定価格(薬価)の高騰が問題視されています。画期的な効果を見せる半面、1人に対する投与で年間1千万円以上かかる高価な薬も登場しています。高齢化で医療費が膨らみ、財政へのしわ寄せが看過できなくなってきています。新薬の開発には、大規模な臨床試験などで研究開発費が膨らみます。微生物や細胞を培養して造り、コストが高い生物製剤が増えている側面もあります。
しかし、臨床で高価な薬が使用されても、高額療養費制度などで患者の自己負担は、一定の枠内に抑えられます。一方で、国の財政負担は大きくなります。新たな抗がん剤であるオプジーボの投与対象は5万人ほどで、仮に全員に使われたとすると、薬剤費は年間1兆7,500億円に膨らむ計算になります。薬剤費は医療費の4分の1を占めています。製薬会社は適正な価格が認められなければ、先進的な新薬開発は難しいと考えています。しかし、今後は薬価の決め方についても費用対効果を考えるべき時期に来ています。

(2016年6月26日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。