賢い選択

 米国の医療業界では、最近盛んに不必要な医療行為をなくす「賢い選択」choosing wiselyと呼ばれる取り組みがなされています。この治療方針は、2012年に米内科専門医認定機構財団が始めました。医師らが不必要な医療行為をやめようと訴えかける活動で、取り組みは17カ国に広がっています。
 不必要な医療が行われる理由として、まず安心感を得ようと薬や検査を求める患者の存在があります。また、医師らが最新の検査機器を使いたがる、従来行ってきた治療法を変えたがらないなどの問題があげられます。わが国においても、検査や治療を選択する際には、医師と患者が一緒になって見つめ直し、無駄を省いて医療の質を向上させようとする試みが必要となります。
 現在医療においては、CTやMRIによる画像診断がよく使用されます。人口100万人当たりの日本のCT台数は107台で、ドイツが35台、米国が41台であり、日本は3倍前後の極めて高い水準です。MRIも同様で、日本の台数の多さは際立っています。これらの検査機器に投じた資金を回収するため、病院で不必要な検査が行われているのではないかという指摘があります。しかし、一方で国内に広く普及したことで、病気の早期発見につながっているという意見もあります。このように日本はCTやMRIの画像検査を使用しすぎるとの指摘はありますが、それによってがんなどの悪性腫瘍の診断が可能になっているといったメリットもあります。

(2016年12月18日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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