迫る2025年問題

2025年には、人口の多い団塊の世代が全員75歳以上になり、社会保障費は大きく膨らみます。当面の新型コロナウイルス対応と持続可能な財政の実現という厳しい選択が待ち受けています。これまでは、高齢化の相当分におさめるのが目標でした。薬価の引き下げなどにより、伸びは年5,000億円以内にとどめてきました。
2022年度からは、高齢化による社会保障費の伸びが直近3年間よりも大きくなる見通しです。2022年の75歳以上の人口は、前年から4.1%増えます。増加率は2021年の0.5%から一気に高まってしまいます。一方で支え手の現役世代は減り続けています。医療費は高齢になるほど高くなります。75歳以上の1人あたり医療費は約92万円で、45~64歳の3.2倍です。薬価引き下げを中心にした既存の抑制策だけでは、歳出の膨張に歯止めをかけられません。
一方、コロナ禍で医療向けの歳出の拡大を容認する世論が高まっています。重症の感染者がすぐに入院できないといった問題が起き、病床の確保が課題になっています。しかし、1都3県の2020年の一般病床の使用率は、前年を下回っています。日本は、人口比でみた病院や病床の数が世界的にも多くなっています。医療資源の配分に問題があり、医療従事者が必要な病院に柔軟に集まれるようにする体制の構築が重要です。国や医師会も、医療崩壊と呼ぶばかりではなく、コロナ対応専門の医療機関を準備することが大切です。
コロナ禍で少子化はさらに加速しています。希望する人が安心して子どもを産める環境を作るには、非正規労働者への支援を増やすなど高齢者に偏りがちな社会保障予算の構造を変えなければなりません。

(2021年4月27日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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