日本国憲法の特徴

日本国憲法は、1947年に施行し一度も改正しておらず、74歳となり、現存する憲法としては最も長寿です。過去には1848年に制定された旧イタリア王国憲法が100年近く存続していました。大半の国は、一般の法律より憲法改正のほうが手続きのハードルが高く、法律と同じ要件で改正できる軟性憲法は英国やニュージーランド、イスラエルなどに限られています。あとの国々は、法律より改正が難しい硬性憲法です。
日本は、衆参両院の総議員の3分の2以上の賛成で発議し、国民投票で白票・無効票を除く有効投票総数の過半数が賛成すれば、改憲が実現します。議会で3分の2以上の賛成が必要な国は、他にも米国、ドイツ、中国、韓国、インドなど多数あります。日本だけが特別に厳格なわけではありません。ドイツの憲法(基本法)は1949年の制定以降、60回超も改正しています。
日本国憲法は、世界の憲法と比べて分量が少ないとされています。日本は英訳した時の語数が4,998語と、少ないほうから5番目です。世界の憲法を見渡すと、制定時期が最近の国ほど分量が多くなる傾向にあります。人権や統治機構の基本条項に加え、自国の歴史や文化といった記述も目立ちます。
議院内閣制より大統領制の国の方が、憲法典が長くなりやすいのも特徴です。大統領制は議会と大統領で別々の選挙制度が必要となり、その分だけ憲法での規定も増えることになります。日本の憲法は、短い割に法律でこれを定めるや法律の定めるところによりというくだりが25カ所あります。施行から74年を経ても憲法を改正せずに対応できたのは、法律に委ねる余地が大きかったのが要因と言えます。

 

(2021年5月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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