進まない経済の構造改革

日本の時間当たり労働生産性は、2022年に52.3ドルと、OECDに加盟する38カ国のうち30位で、主要7カ国(G7)で最も低くなっています。日本の潜在成長率は、1%を割る状態が既に20年続いています。定額減税のような財政政策で一時的に物価高の痛みを和らげられたとしても、日本経済の実力を引き上げなければ、好循環は定着しません。
日銀はマイナス金利政策の解除を決めましたが、政府はまだデフレからの完全脱却を判断していません。安倍晋三政権時代の2013年1月に、日銀とアコードと呼ばれる共同声明を結んでいます。デフレからの早期脱却と物価安定の下での持続的な経済成長の実現を掲げ、2%の物価安定目標を設定しました。大規模な金融緩和と財政出動が柱でしたが、経済構造の変革を図り、成長戦略や規制緩和に取り組むこととしていました。しかし、供給力を底上げする成長戦略や構造改革は進んでいません。
年齢に関係なく働く意欲のある人を処遇し、先端技術への国内投資を急がなければ、細る労働力への対応や内需主導の成長はおぼつかない状況です。雇用の流動化や新事業の育成などの新陳代謝を促す政策は、一部の企業や労働者に痛みが生じる場合もありますが、それを乗り越えて政府が経済政策の発想を転換しなければなりません。

(2024年3月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。